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家康のことを調べていたら出てくる『三河物語』。徳川家の昔の話が載っているなら、家康本人の記録なのかな?
ここは、作者を一人確かめると読み方が変わります。書いたのは大久保忠教、通称・彦左衛門。家康に仕えた家臣で、家康自身が書いた日記ではありません。
しかも、家の子孫へ伝える教えという性格の強い本なんです。出来事の順番だけを拾う前に、「誰が、誰へ残した本?」から入ってみよう。
家康を語る側に、大久保家の歴史もある
国立公文書館の『三河物語』解説では、忠教が晩年に子孫のために書いた、家訓的な性格の強い歴史書と紹介されています。家訓とは、家の人々や子孫へ伝える教えのことです。
内容は徳川家の祖先から家康へと続きますが、その中には大久保一族や忠教自身が尽くした働きも織り込まれています。
つまり、家康の行動だけが独立して並ぶ本ではないんですね。主君の歴史を語るところへ、自分の家がどう仕えてきたかも重なる。
家康の名前が出てくる箇所を読むときも、その近くで大久保家がどんな立場に置かれているかへ目を向けると、この本らしい声を追いやすくなります。
忠義を説くことと、不満を抱くことが同じ本に入る
忠義の教え、と聞くと、主君を褒める言葉だけが続きそうでしょう。
ところが、公文書館の解説では、三河の頃から仕えてきた家臣たちの待遇に不満を抱きながらも、徳川家への忠義を強い口調で子孫に説いている、と説明されています。
あれっ、不満もあるんだ。
そこを読み飛ばさないでほしいんです。仕えてきたことへの誇りと、現在の扱いへの思い。その両方を持つ書き手が、子孫へどう生きてほしいかを語る本として見ると、単なる年表とは違う入口になります。
ただし、一人の書き手に立場があるからといって、その本にある出来事が全部作り話だと決める必要もありません。出来事を確認する問いと、書き手が何を訴えるかを読む問いを、いったん分けてみよう。
最初に読む版は、作者と訳者をセットで確認しよう
原文が難しそうなら、小林賢章訳『現代語訳 三河物語』という選択肢があります。筑摩書房の紹介では、大久保彦左衛門著・小林賢章訳の、ちくま学芸文庫として確認できます。
目次は、徳川家の先祖と大久保一族、若き日の家康、江戸開府と家康の死という三つのまとまり。まず家康の若い頃を読みたいなら、第二のまとまりを目印にできます。
本の識別番号であるISBNは「9784480098443」。似た題名の本を探すときも、作者と訳者まで合わせてね。
若い家康の章を開くときは、活躍した側に大久保家の誰がいるかも、一緒に追ってみて。家康だけを探す読み方から、書き手が子孫へ伝えたかった家の働きにも、目を向けられます。